「4%ルールで本当に自分は大丈夫なのか」——この疑問を、金融SEとして数字で答えたいと思い、モンテカルロシミュレーターを自作しました。

Claude Codeを使って作ったツールなので、ブラウザで動く・インストール不要・完全無料です。自分の資産額と取崩し条件を入力するだけで、最大100万通りの未来シナリオから「成功率」を算出してくれます。

👉 シミュレーターを開く

まずはデフォルト設定のまま「シミュレーション実行」を押してみてください。 以下の説明は、気になった設定項目だけ読めばOKです。

なぜこのツールを作ろうと思ったか、4%ルールの「守りすぎ」問題とモンテカルロの背景を知りたい方は先にこちらの記事をどうぞ。


1. 設定項目の解説

【設定①】資産・取崩し設定

項目 説明
初期資産額(万円) リタイア時点の投資資産の総額。現金バッファは別設定なので、ここには投資資産のみ。
取崩し方式 定額:毎年同じ額(インフレ調整あり)を取り崩す。生活費が安定し計画が立てやすい。4%ルールの基本形。
定率:毎年の残高×取崩率で取り崩す。残高連動なので資産枯渇リスクが低い。ただし生活費が年により変動。
年間取崩額(万円/年) 定額モードのみ。例:「120」=年間120万円(月10万円)。
年間取崩率(%) 定率モードのみ。4%ルールを試すなら「4」。
最低取崩額(万円/年) 定率モードのみ。残高が減っても最低限これだけは取り崩す金額。生活の最低ラインを守る設定。
成功判定金額(万円) 総資産(投資+現金バッファ)がこの額を下回ったら「失敗」。デフォルトは0円。「最低1,000万円は残したい」なら1000と入力。

💡 考え方のヒント: 固定費(住居費・食費)は定額モード、娯楽費や旅行費は定率モードのように使い分けるのが現実的です。


【設定②】シミュレーション設定

項目 説明
計算モード 月次(デフォルト):月ごとにリターンを生成し月初に取り崩す。年率パラメータを月次換算(÷12・÷√12)して計算。
年次:年ごとにリターンを生成し年初に取り崩す。トリニティスタディと同じ時間軸。
シミュレーション期間(年) 40歳リタイア→100歳想定なら「60」年
シミュレーション回数 1万回(高速)・10万回(標準)・100万回(高精度)。デフォルト10万回。

【設定③】現金バッファ設定

項目 説明
現金バッファ(年分) 投資とは別に持つ現金を「年間取崩額の何年分」で設定。例:「2」で年間120万円取崩しなら、240万円の現金バッファ。
現金バッファ発動ライン(−X%) 初期ポートフォリオからの累積下落率がこの値を超えると、投資資産ではなく現金バッファから取り崩す。例:5%設定・初期3,000万円 → 2,850万円を下回ると発動。

💡 ポイント: 下落局面で「安値で売らない」ための保険です。現金バッファの有無で成功率がどう変わるか、ぜひ比較してみてください。


【設定④】リターン・インフレ設定

項目 デフォルト値 説明
期待リターン(%) 11.79% S&P500の1928〜2024年の算術平均(Damodaran教授のデータ)
標準偏差(%) 19.50% 同データのリターンのブレ幅
インフレ率(平均%・標準偏差%) 日本の近年のインフレを踏まえて設定

💡 オルカン(全世界株式)で運用している場合: 期待リターン 10%前後・標準偏差 16〜18% が参考値です。S&P500のデフォルト値より若干低めに設定してください。


【設定⑤】為替設定

外貨建て資産がある場合に為替変動を反映できます。

項目 説明
外貨建て資産比率(%) S&P500に全投資なら100%
為替変動率(平均%・標準偏差%) 円安予想なら+、円高予想なら−。デフォルト平均+1%・標準偏差10%
株式リターンとの相関係数 「株高=円安」の傾向を反映。S&P500なら約0.3が目安

💡 ポイント: 為替あり・なしの両方でシミュレーションして比較するのがおすすめです。


2. 結果の読み方

主要指標

指標 見方
成功率 資産が尽きなかったシナリオの割合。80%台あれば十分(理由は後述)。
中央値最終資産 全シナリオの真ん中の最終資産額。
実質中央値最終資産 インフレ調整後の実質価値。
生存率50%割れのタイミング 半数のシナリオで資産が枯渇する年。「何万円まで取り崩せるか」の逆算に便利。
現金使用期間の平均カバー率 現金バッファが発動した期間の取崩しを何%賄えたかの平均。100%なら全額カバー。

グラフ

  • ポートフォリオ推移グラフ: 10〜90パーセンタイルのバンド表示。上が「運が良い未来」、下が「運が悪い未来」。
  • サバイバル率グラフ: 各年時点で資産が残っているシナリオの割合。急激に下がっている時期が「リスクの集中する時期」。

3. このツールの真の使い方:毎年シミュレーションを回す

このツールの真価は、一度きりではなく、毎年使い続けることにあります。

やることはシンプル: 毎年、今の資産残高を「初期資産額」に入れ直して実行するだけ。それで「今この瞬間の成功率」がわかります。

成功率による行動の目安(ガードレール戦略)

成功率 状態 アクション
95%超 守りすぎ 取崩し額を増やして生活を豊かにする余地あり
80〜85% 適正 FIRE開始時の目標ライン。このまま継続
70%未満 状況確認 取崩し額の10%程度の見直しを検討。現金バッファ積み増しや一時的な収入で対応できることが多い

💡 「成功率80%で大丈夫なの?」 と思うかもしれません。残りの20%のシナリオも、毎年ウォッチして早めに調整すれば、ほとんどリカバリ可能です。80%は「放置した場合の確率」。積極的に管理する前提なら、実質的なリスクはもっと小さくなります。

💡 成功率の絶対値より、「条件を変えたときの変化量」で読むのがコツです。取崩し額を変えたら成功率がどう動くか?現金バッファを増やしたら?——その比較がこのツールの本来の価値です。


まとめ

トリニティスタディ(4%ルール) モンテカルロシミュレーション
アプローチ 過去の歴史をトレース ランダムな未来を大量生成
柔軟性 固定ルール 定期的な再計算・戦略更新が可能
活用場面 取崩し率の目安を知る 自分の条件での成功率を確認する

まずは自分の数字を入れてシミュレーションを実行してみてください。 現在の計画がどれくらい堅牢か、数字が教えてくれます。

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このツールはClaude Codeを使って実装しました。「自分が欲しいツールを自分で作る」という体験は、金融SEとしてやってきたシステム開発の感覚と地続きで、非常に楽しい作業でした。ツール制作の過程については別の記事で紹介予定です。


背景を深く知りたい方へ: 4%ルールの「守りすぎ」問題・シークエンスリスク・ガードレール戦略の考え方を詳しく解説した記事はこちら。 👉 取崩し戦略の考え方 ~4%ルールの「守りすぎ」問題とモンテカルロシミュレーション~