「高配当株投資を始めたいけど、米国ETFと日本株、どちらを買えばいいのか」
投資を始めようとする方からよく聞かれる疑問です。私の答えは「どちらか一方ではなく、組み合わせる」です。
ただし、この結論に至るには理由があります。この記事では、私が高配当株投資の設計として選んだ「米国ETF+日本個別株」という構成の背景と、その具体的な使い分けを公開します。テーマは「なぜこの投資法なのか」という設計思想の部分です。
日本の高配当個別株をどう選ぶかの具体的な基準(利回り・財務チェック・セクター分散)については、別記事「日本の高配当株・銘柄選定基準を公開」で詳しく解説しています。
高配当株にたどり着くまで
結論にたどり着く前に、まず私自身が高配当株に行き着いた経緯を簡単に紹介します。試行錯誤の過程を共有することで、後の章で語る「設計思想」がどのような実体験から生まれたかが伝わると思います。
私が投資を始めたのは2008年です。結婚してお小遣い制になり、「独身時代の貯金に頼るだけでは、先輩・上司として後輩に奢れなくなる日が来る」という危機感がきっかけでした。そこから高配当株にたどり着くまでには、10年以上の試行錯誤があります。
高配当株に舵を切ったのは2020年、コロナ禍の頃です。ただし、それ以前もずっと投資自体は続けてきました。
たとえば、応援したい企業に単元株単位で集中投資したこともあります。上がる年もあれば、下がる年もありました。クラウドファンディング(maneo等)では利回り5%の案件に分散投資しましたが、繰り上げ償還で思ったより短期に終わったり、デフォルトで元本が返ってこないケースも経験しました。案件を分散していたためトータルはプラスでしたが、「リスクに対してリターンが合っていない」と感じました。
新興国株ETFや新興国債券ETFも試しました。分配利回りは悪くないものの、元本が下回りがちで、期待したほどのリターンは出ませんでした。ここで気づいたのが、GDPの成長率と株価は必ずしも連動しないということです。新興国のGDP成長率が高くても、株価がそれに連動して力強く上昇するとは限りません。詳しく分析したわけではありませんが、為替の影響が大きいのではないかと推測しています。
ただ、大きな成功体験もあります。東日本大震災やリーマンショック後の暴落時に、日経平均や個別株を買い向かったことで、その後大きくプラスになりました。「相場が総悲観になっているときに買う勇気」が、長期的な投資成績を決定的に左右すると身をもって学びました。
こうした試行錯誤を経て、リベ大(両学長のYouTubeチャンネル)をきっかけに、インデックス投資としてS&P500の積立を始めました。その後「資産を増やすだけでなく、日々のキャッシュフローも育てたい」という目的が明確になってから、高配当株投資に舵を切りました。
高配当株投資はインデックス投資より難易度が上がります。最大の壁は銘柄の財務分析ですが、迷走していた時期に決算書や投資用語を学ぶ習慣が自然と身についていたため、そのハードルは比較的低い状態でスタートできました。
私が高配当株投資をする理由
設計思想を語る前に、大前提として「何のために投資しているのか」という目的を整理しておきます。目的が定まると、そこから戦略の選択は自然と導かれます。
目的は、安定的な配当を受け取り続けることです。
株価の値上がり益(キャピタルゲイン)より、毎年受け取れる配当金を増やし続けることを目標にしています。理想は増配によって配当収入が年々自然と増えていく状態です。
配当金は株価が下落しても入ってきます。「含み損が出ていても配当は受け取れている」という状況は、長期で投資を続けるうえで精神的な支えになります。株価の上下に一喜一憂せず、淡々と配当を積み上げていくイメージで運用しています。
この目的のもとで、「どの資産に、どう投資するか」を設計したのが以下の戦略です。
全体構成:米国株はETF、日本株は個別株
目的が「安定的な配当を受け取り続けること」だと定まると、次は「どの資産を、どう組み合わせるか」という設計の話になります。私のポートフォリオは大きく2層に分かれています。
| 区分 | 運用方法 | 主な銘柄・ETF |
|---|---|---|
| 米国株 | ETF | VYM、HDV(SCHDは検討中) |
| 日本株 | 個別株 | 約100銘柄に分散 |
なぜこのような分け方をしているのか、それぞれの理由を説明します。

米国株はETFで十分な理由
世界の中心は米国株市場
世界の株式市場の時価総額を見ると、米国が占める割合は圧倒的です。世界全体への投資(オルカンなど)でも米国比率は6割前後を占めます。高配当株投資においても、米国株を外すことは現実的ではありません。
私が米国株の成長を長期的に信頼している理由は、米国経済の構造的な強さにあります。
まず人口動態です。日本をはじめ多くの先進国が少子高齢化に直面する中、米国は移民受け入れもあって人口が緩やかに増加し続けています。消費と労働力の両面で経済の底上げが続く国は、株式市場にとっても追い風です。
次に政治・行政の仕組みです。米国は資本主義に最適化された国であり、企業が利益を追求しやすい法制度・税制・規制環境が整っています。さらに、イノベーションを後押しする行政の姿勢(研究開発投資・スタートアップ支援・特許制度など)が、GAFAM以降も新たな成長企業を生み出す土壌となっています。
そしてグローバル展開による成長の取り込みです。先進国のGDP成長率は高くないにもかかわらず、S&P500やオルカンのパフォーマンスが高い理由の一つは、先進国の大企業が新興国にも事業展開しており、新興国の発展を取り込んでいる点にあります。新興国の成長の恩恵を受けたいなら、新興国ETFを直接買うより、グローバルに展開する先進国企業の株を持つ方が効率的です。
こうした理由から、米国株のみへの投資でも十分に合理的だと考えています。私自身が日本株も組み合わせているのは、後述する為替リスクの分散が目的であり、米国株の成長性への信頼は揺らいでいません。
個別株の情報収集が難しい
ただし、米国株を個別株で運用することには大きな壁があります。決算書・アナリスト情報・ニュースのほとんどが英語であり、日本語の情報は翻訳やフィルターを経たものが多いため、鮮度と精度が落ちるからです。
言語の壁があるまま個別株を選んでも、適切な財務分析はできません。「何となく有名だから」で選ぶのは、根拠のない投資になってしまいます。
米国には優良な高配当ETFがある
米国株の場合、この問題をETFで解決できます。分散投資と安定的な配当成長を両立した優良ETFが整っているためです。
日本株に同様の選択肢がほぼないのとは対照的に、米国には高配当戦略に特化したETFが複数あり、個人が一から銘柄選定しなくても十分な分散と配当安定性を得られます。だから米国株はETFで十分、という結論になります。
米国ETFの使い分け:VYM・HDV・SCHD
「ETFで十分」と言っても、米国の高配当ETFには複数の選択肢があります。それぞれ特徴が異なるため、目的に応じた使い分けが必要です。私が注目しているのは次の3本です。
| ETF | 特徴 | 私の評価 |
|---|---|---|
| VYM(バンガード・米国高配当株式ETF) | 分散度が最も高く、増配率も高い。利回りはやや低め(3%程度) | 長期視点での主力 |
| HDV(iシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF) | 財務健全性を選定基準にした銘柄で構成。配当利回りが高め。エネルギー・生活必需品の比率が高い | 利回り補完 |
| SCHD(シュワブ米国配当株式ETF) | 配当成長と利回りのバランスが優秀。米国では非常に人気 | 魅力的だが未保有 |
現時点で私が保有しているのはVYMとHDVです。SCHDはまだ投資できていませんが、将来的に組み入れたいと考えています。
SPYDについて補足します。 SPYD(SPDR ポートフォリオS&P 500 高配当株式ETF)は配当利回りの高さが魅力ですが、配当金が年によって大きく増減を繰り返す設計のETFです。S&P500高配当指数への連動を目的として年2回ポートフォリオを入れ替えるため、保有銘柄の顔ぶれが変わりやすく、配当の安定性は低くなります。
実際にコロナショック(2020年)では大幅に減配し、2022年には急増、その後また下落するなど、受け取れる配当金が読みにくいETFです。配当金を安定した収入として使いたい場合には向かないと考えており、私は主力にしていません。
VYMをメインにする理由
私がVYMをメインに置いている理由は、分散度と増配実績のバランスです。
- 保有銘柄数は500銘柄以上と広い分散
- 長期的な増配の実績がある
- 配当利回りはやや低め(3%前後)だが、増配によって実質利回りが高まる
利回りだけを見るとHDVやSCHDに劣る場面もありますが、長期で持ち続けることを前提にするとVYMの増配力が効いてきます。
為替リスクとの向き合い方
米国ETFを語るうえで避けて通れないのが為替リスクです。配当金はドル建てで受け取るため、円安のときは円換算で増え、円高のときは減ります。
これは無視できないリスクです。特に「配当金で毎月の生活費を賄いたい」という使い方をする場合、受け取る円建ての金額がブレることは大きな問題になります。
ただし、私の場合は配当金を「贅沢費・楽しみのお金」として使う位置づけにしています。生活費の補完ではなく、旅行や趣味などに使うお金として考えると、ある程度の変動は許容できます。
この使い方であれば、米国ETFだけでも十分シンプルな運用が可能です。しかし「円建ての安定した収入を作る」という目的があるため、日本株を組み合わせています。
なお、現在のポートフォリオは日本個別株の比率が高い状態ですが、今後は米国ETFの比率を高めていきたいと考えています。配当金はお小遣いとして使う位置づけのため為替のブレは許容できること、配当が多少ブレても長期的に増配・成長が見込める商品の方が魅力的であること、そして日本より米国の経済成長を長期的に信頼していることが、その理由です。
日本株の役割:円建て収入の柱
ここからは、もう一方の柱である日本株について説明します。日本の高配当株をポートフォリオに組み込んでいる主な理由は2つです。
- 為替の影響を小さくする — 円建ての配当収入を作ることで、為替変動による収入のブレを減らす
- 生活費との連動性を高める — 日本円で生活している以上、円建ての収入源があると実生活への活用がしやすい
米国ETFと日本個別株を組み合わせることで、「ドル建て配当」と「円建て配当」の両方を持つ構成になります。為替が円高でも円安でも、一定の配当収入が入ってくるバランスを目指しています。
なぜ日本はETFでなく個別株か
「日本株も楽にETFで済ませられないか」と思う方も多いはずです。私も最初はそう考えていました。しかし、日本の高配当ETFには構造的な問題があるため、個別株を自分で選ぶというスタイルに落ち着きました。理由は次のとおりです。
日本の大企業は景気敏感株が多い
東証上場企業の中でも、時価総額上位には景気敏感株が多く含まれます。景気敏感株とは、景気の良し悪しによって業績・利益が大きく変動する業種のことです。
典型的な景気敏感業種:
- 鉄鋼・金属
- 化学
- 自動車・輸送機器
- 海運
これらの業種は景気が良いときに大幅増配をする一方、景気が悪化すると大幅減配・無配になることがあります。
景気敏感株が多いETFは配当が安定しない
日本の高配当ETF(例:「NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信」など)には、こうした景気敏感株が多く組み込まれています。景気が良いときは配当利回りが高いですが、不況局面になると一気に配当が減ります。
「安定した配当収入」を目的とする高配当株投資の観点では、景気連動で配当が乱高下するETFは目的に合いません。
だから自分で選ぶ
そのため日本株は個別株で、景気に左右されにくい安定業種の企業や、累進配当方針(配当を減らさない・増やし続ける方針)を掲げる企業を自分で選んで組み合わせています。
安定業種の例:
- 通信(NTT、KDDIなど)
- 食品・生活必需品
- インフラ(電力・ガス)
- 保険
自分で選ぶ手間はかかりますが、目的に沿った配当の安定性を確保するためには避けられないプロセスです。
80〜100銘柄に分散する理由
個別株を選ぶと決めた次は、「何銘柄に分散するか」という問題が出てきます。私のポートフォリオは現在約100銘柄です。
「多すぎるのでは?」と感じる方もいると思います。しかし、この銘柄数には明確な理由があります。
減配リスクはゼロにできない
どれほど慎重に銘柄を選んでも、減配・無配のリスクはゼロにできません。 企業は外部環境の変化(競合出現・規制変更・自然災害・感染症など)に常にさらされており、今後も安定配当を続けると保証できる企業は存在しません。
1銘柄の比率が高いポートフォリオで減配が起きると、配当収入全体に大きなダメージを与えます。
1銘柄の影響を小さくする
80〜100銘柄に分散すると、1銘柄あたりの保有比率は1%前後になります。仮に1銘柄が無配になっても、ポートフォリオ全体の配当収入への影響は1%以下にとどまります。
私の目安は80銘柄程度です。現在の私は約100銘柄と超えてしまっているため、これ以上は増やさないようにしています。80銘柄であれば1銘柄あたり約1.25%の比率になり、リスク分散として十分機能すると考えています。
単元未満株(SBI証券S株)の活用
「80〜100銘柄に分散するには、莫大な資金が必要では?」というのも当然の疑問です。この壁を解決してくれるのが、単元未満株のサービスです。
日本株は通常、単元株(100株単位)で購入します。1株1,000円の銘柄なら最低10万円、1株5,000円なら50万円必要です。これを100銘柄揃えるとなると、数千万円の資金がなければ始められません。
しかし、単元未満株を使えばこの問題を解決できます。
単元未満株とは
単元未満株とは、通常の取引単位(100株)より少ない単位で株を購入できるサービスです。1株単位で買えるため、1株1,000円の銘柄なら1,000円から購入できます。
毎月数万円の積立で、少しずつ銘柄数を増やしていくことが可能です。
SBI証券「S株」を使う理由
単元未満株サービスは複数の証券会社が提供しています。私がSBI証券の「S株」を選んでいる理由は、取扱銘柄数の広さです。
楽天証券の「かぶミニ®」も同様のサービスですが、一部の中小企業銘柄を購入できないケースがあります。高配当株の中には、大企業だけでなく安定した中小企業も含まれるため、選択肢の広さでSBI証券が優れています。
戦略全体の設計思想まとめ
この記事で説明してきた内容を整理します。
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 米国株は情報収集が難しい | 優良ETF(VYM・HDV)で代替する |
| 為替リスクで配当収入がブレる | 日本株(円建て)を組み合わせる |
| 日本高配当ETFは配当が安定しない | 安定業種の個別株を自分で選ぶ |
| 1銘柄の減配リスクを小さくしたい | 80〜100銘柄に分散する |
| 資金が少なくても分散できない | 単元未満株(SBI証券S株)を活用する |
すべての選択に「配当収入を安定的に積み上げる」という目的から逆算した理由があります。「何となくこれが良さそう」ではなく、「この目的に対してこの手段が最適」という設計をしてきた結果が現在の構成です。
「いつ買うか」も同じくらい重要
ここまで「何を買うか」を整理してきましたが、実は同じくらい大事なのが「いつ買うか」です。
高配当株はグロース株のように株価が右肩上がりに伸びるタイプではなく、成熟企業が中心です。割高なタイミングで買ってしまうと、配当を受け取っても株価下落で相殺され、トータルでマイナスになることがあります。
判断軸として有効なのは 配当利回り です。米国ETF(VYM・HDV・SCHD等)は10年以上の長期平均利回りと現在を比較し、日本個別株は銘柄ごとの過去平均と比較する——どちらも「過去平均より高ければ割安シグナル」という共通の考え方で判断できます。
詳しくは姉妹記事 高配当株の買い時を見極める:配当利回りで割高・割安を判断する方法 にまとめています。
自分の数字でゴールまでの距離を確認する
「米国ETF+日本個別株」という設計が腹落ちしたら、次に確かめたいのは「自分のゴールに対して、この戦略で本当に届くか」です。目標とする年間配当額・現在の入金ペース・想定する増配率を入れると、いま狙うべき平均配当利回りが逆算できるツールを作りました。利回り3.5〜4%という現実的なゾーンに収まっているか、それとも無理筋の高利回りを取りに行く必要があるかが一目で分かります。
まとめ
高配当株投資において「米国ETF+日本個別株」という組み合わせを選んでいる理由を整理しました。
投資の正解は人それぞれです。インデックス投資一本の方が合っている方も多くいます。ただ「配当金を毎年積み上げたい」「キャッシュフローを育てたい」という目的を持つ方には、この設計思想が参考になれば幸いです。
具体的な銘柄の選び方については、次の記事で詳しく解説しています。
参考
注記: 本記事は特定の銘柄・ETFの購入を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。