保険の窓口や職場に来た担当者から、「これは保障もついて、運用でお金も増えるお得な保険です」と変額保険を勧められた。そんな経験はないでしょうか。話を聞くと魅力的に思える一方で、「NISAで自分で運用したほうがいいのでは」という迷いも残ります。

決めきれないのは、たいてい次のあたりが引っかかっているからです。

  • 保険なのに投資?NISAと何がどう違うのか、そもそも整理できていない
  • 「手数料が引かれている」とは聞くけれど、いくら引かれているのか見えない
  • 一見するとお得に見えるけれど、本当にそうなのかを自分では確かめようがない

そしてすでに契約している方には、もう1つ重い迷いがあります。「いま解約したら、これまで払った分が損になるのではないか」という迷いです。本記事では、こちらにも数字で答えます。

結論をひとことで言えば、保障と資産形成を「分けて」考えると、多くのケースではNISA(+必要なら掛け捨て保険)のほうが手数料の面で有利になります。大事なのは「良い・悪い」ではなく、手数料と税金の構造を理解したうえで自分で選べることです。

なお、本記事で「NISA」と呼んでいるのは、NISA口座で全世界株(オルカン)やS&P500などの低コストなインデックス投資信託を積み立てる方法のことです。

なぜNISA寄りの結論になるのか。それは、変額保険には保険関係費と解約控除という、NISAなら払わずに済む費用がかかるからです。運用そのものの成績が同じでも、そこから引かれる費用が多いぶん、最後に手元に残る額は少なくなります。本記事では、その差を金融SEの視点で分解し、モデルケースの数字で比べていきます。

なお、本記事は特定の保険商品を推奨・非推奨するものではありません。金額はすべて公開されている料率レンジから置いた「モデル(仮定)」であり、実在商品の受取額を断定するものではないことを、先にお断りしておきます。

まだ加入していない方は「NISAと実質リターンを数値で比較する 」「保障は本当に必要か?の線引き 」から読むのが近道です。すでに加入している方は「すでに契約している人へ:解約すべきかの判断基準 」へどうぞ。


この記事でわかること

  • 変額保険に「NISAにはない手数料」がどれだけ重なっているのか、その内訳
  • 保障をそろえて公平に比べると、NISAとの受取額の差はどれくらいになるのか(モデル試算)
  • 「保障が必要な人・不要な人」の線引きと、変額保険が有効なケース
  • すでに契約している場合に、「いま解約する」か「解約控除がゼロになるまで待つ」かを数字で比べる方法

なぜ窓口で変額保険を勧められるのか

はじめに大事な前提を1つ。窓口で変額保険を勧められること自体は、違法でも、担当者が不誠実だからでもありません。これは保険業界に共通する、ごく一般的な収益構造です。

保険は、契約が続く限り保険会社に保険料が入り、その一部が販売した窓口や担当者の報酬になります。とくに保障と運用がセットになった商品は保険料が高めで、そのぶん販売した側に入る報酬も大きくなりやすい。だからこそ「おすすめ商品」として案内される場面が多くなります。

ここで問題にしたいのは、担当者個人の善し悪しではありません。コストが保険料の中に溶け込んでいて、契約者からはいくら払っているのかが見えない。この商品の作りのほうが問題です。投資信託なら「信託報酬◯%」と一目で分かりますが、変額保険のコストは複数の名目に分かれ、保障ともセットのため実質いくら払っているのかがつかみにくい。まずはこの見えないコストを、名前ごとに分解してみましょう。

次の図は、この構造をお金の流れとして表したものです。繰り返しになりますが、これは保険業界に共通する一般的な仕組みで、担当者が不誠実だという話ではありません。

保険料は営業担当者の報酬・代理店や窓口の手数料・保険会社の運営費や利益・保障の原資といった多くの取り分を通り、実際に運用にまわるお金は細くなるという収益構造の図

変額保険の手数料構造を分解する

変額保険のコストは、大きく3つに分けられます。このうちNISA(投資信託)にも同じようにかかるのは1つだけで、残る2つは変額保険にしかないコストです。順に見ていきます。

保険関係費

保障を提供し、契約を維持・管理するための費用です。死亡保障の対価や契約の事務コストが含まれます。NISAには存在しない、保険ならではのコストで、たとえるなら「運用とは別に払う保険の会費」です。料率や引き方は商品ごとに異なり、各社の目論見書で開示されています。

特別勘定の運用管理費用

変額保険で集めたお金は「特別勘定」という専用の枠で運用されます。ここにかかる費用が運用管理費用で、これは投資信託の信託報酬にあたる部分です。3つのうちNISAと直接比べられるのはここだけですが、同種のインデックス投信より高めに設定されていることも少なくありません(各社の目論見書で開示されています)。

解約控除

早い時期に解約すると、解約返戻金から差し引かれるペナルティ的な費用です。契約から一定年数の間だけ発生し、年数が経つほど小さくなり、やがてゼロになるのが一般的です。たとえるなら「途中で辞めると取られる違約金」のイメージで、これもNISAにはない仕組みです(NISAはいつ売っても手数料ゼロ)。控除の割合と期間は商品ごとに違い、目論見書の解約控除スケジュールに記載されています。

この3つを、NISA(投資信託)でかかる費用と並べると次のようになります。

変額保険の費用 NISAの費用 初心者向けの一言
保険関係費 なし(0円) 保障のために別途払う「保険の会費」。NISAにはこの費用がない
特別勘定の運用管理費用 信託報酬(年0.1%前後〜) 運用してもらう手間賃。ここだけは両者に共通してかかる
解約控除 なし(いつ売っても0円) 途中でやめると取られる違約金。NISAは売却時も手数料ゼロ

表の通り、3つのうち2つはNISAに存在しないコストです。つまり変額保険は、NISAと同じ運用をしても、その分だけ手元に残りにくい構造になっています。では、その差は具体的にいくらになるのか。次章で数字にしてみます。

手数料の層の違い。変額保険は保険関係費・特別勘定の運用管理費用・解約控除の3層、NISAは信託報酬の1層だけで、NISAにない費用が2つ重なる

NISAと実質リターンを数値で比較する

ここで大事なのは、公平に比べることです。変額保険には死亡保障がついているので、保障のないNISA単体と比べると変額保険に不利すぎます。そこで「同じ保障・同じ支払額・同じ運用成績」でそろえて、差が手数料だけに出るように設計します。

比べるのは次の3つです。

  • A:変額保険(死亡保障あり/特別勘定で運用/コスト=保険関係費+運用管理費用+解約控除)
  • B:NISA+掛け捨て保険(同額の死亡保障あり/インデックス投信で運用/コスト=信託報酬+掛け捨て保険料)
  • (参考)C:NISA単体(保障なし/インデックス投信のみ/コスト=信託報酬だけ)

主役は「A vs B」です。同じ機能(保障+運用)を、1本にまとめるか、掛け捨て保険とNISAに分けるかの勝負になります。Cは「保障が要らない人なら最も安い」という参考値です。

試算の前提(このモデルで計算します)

以下はいずれも特定の商品ではなく、公開されている料率レンジから置いた仮定モデルです。実在商品の数字ではありません。

  • 年齢:35歳/期間:20年(55歳まで)
  • 毎月の支払額:3者とも一律 2万円(合計 480万円)
  • 死亡保障:AとBは1,000万円で同じ/Cはなし
  • 運用リターン:3者とも同じ年3%に固定(=「変額保険は増えない」という話ではなく、あくまで手数料だけの差を見るため)。この3%は比較のための仮の数字です。変額保険もNISAも元本保証はなく、運用実績によっては払った額を下回る(元本割れする)ことがあります。どちらか一方だけが安全ということはありません
  • A のコスト:実質年2.0%(モデル値)※1。20年満期到達のため解約控除は0とする(途中解約時のみ発生する点は後述)
  • B のコスト:投信の信託報酬 年0.1%+掛け捨て保険料 月1,500円※2。2万円のうち保険料1,500円を差し引いた 18,500円を投資に回す
  • C のコスト:投信の信託報酬 年0.1%のみ。2万円を全額投資に回す
  • 計算式:積立の複利計算(毎月一定額を「リターンからコストを引いた実質年率」で複利運用)。NISA(BとCの投資部分。年24万円は新NISAの年間枠内)は運用益が非課税。変額保険(A)の運用益は本来は課税対象ですが、ここでは手数料の差だけを見るため、あえてAも非課税とみなして計算しています(=Aに有利な前提です)。税を考えるとAの不利はさらに広がる点は、表の後で補足します

※1 変額保険の費用は「保険関係費(保障・契約維持のコスト)+特別勘定の運用にかかる費用」で構成されます。たとえば東京海上日動あんしん生命の開示例では、保険料払込免除の費用が保険料に対して年0.2%、基本保険金額を最低保証するための費用が積立金に対して年0.375%、特別勘定の信託報酬が年0.088%〜0.44%(特別勘定の型による)と公表されています。そのうえで「契約の締結・維持に必要な費用」と「死亡保険金を支払うための危険保険料に相当する費用」の2つは、被保険者の年齢・性別・保険期間等によって異なるため、具体的な金額や割合では表示できないとされています。つまり開示されている分だけでも合計で年0.6〜1.0%程度になり、そこに金額の分からない2費目が乗ります。実際の水準は商品・年齢で幅があるため、本記事では合算して年2.0%と置きました(→参考文献)。

※2 掛け捨て保険料の月1,500円は、35歳・非喫煙・保障1,000万円のネット定期のモデル値です。実際は性別・喫煙・保険期間などの条件により月1,500〜2,500円程度で、ここでは下限寄りの1,500円で試算しています。

この前提で20年後の運用資産を試算すると、目安は次の通りです。

A:変額保険 B:NISA+掛け捨て (参考)C:NISA単体
20年間の総支払額 480万円 480万円 480万円
死亡保障 1,000万円 1,000万円(掛け捨て) なし
実質の運用年率 約1.0% 約2.9% 約2.9%
20年後の運用資産(目安) 約530万円 約600万円 約650万円
Bとの差 約▲70万円 +約50万円

数字はモデル前提からの概算で、商品・料率・リターンによって前後します。それでも傾向ははっきりしています。同じ保障・同じ支払い・同じ運用成績でも、AよりBのほうが手元に多く残りやすい。差の正体は運用の巧拙ではなく、保険関係費のぶんだけ実質リターンが目減りする、この一点です。保障が要らない人ならCがもっとも安く済みます。

20年後に手元に残るお金のモデル試算。変額保険 約530万円(保障あり)、NISA+掛け捨て保険 約600万円(保障あり)、NISA単体 約650万円(保障なし)

変額保険が「増えない」わけではありません。増えても保険関係費が毎年引かれ続けるため、同じ運用を分けて持つ形(NISA+掛け捨て)に手取りで届きにくい、という構造の話です。

さらに、上の試算は税金の面で変額保険に有利な前提を置いています。NISAは運用益が完全に非課税ですが、変額保険を解約・満期で受け取ったときの運用益は「一時所得」として課税対象です※3。上の表ではこの税をあえて考慮せず、変額保険も非課税として計算しました。つまり実際に税引き後で比べると、NISA+掛け捨てと変額保険の差は、表の数字よりさらに広がりやすいということです。手数料に加えて税金の面でも、「分けて持つ(NISA+掛け捨て)」ほうに分があります。

※3 一時所得には50万円の特別控除があり、課税対象になるのは控除後の利益のさらに半分(1/2)です。軽めの扱いではありますが、利益が大きいほど税負担は出てきます。なお、この扱いは本記事がモデルにしている「月払・長期の契約を一時金で受け取る場合」のものです。一時払で保険期間5年以内(または5年以内に解約)の場合は金融類似商品として20.315%の源泉分離課税、年金形式で受け取る場合は雑所得と、契約形態や受取方法によって扱いが変わります。

まだ契約していない方へ。窓口でこの手の商品を勧められたら、その場でサインせず、目論見書の「保険関係費」の料率と「解約控除」のスケジュールだけメモして持ち帰ってください。家に帰って、同じ保障を掛け捨て保険で買った場合の保険料と、NISAの信託報酬を並べて比べる。それだけで判断の解像度が大きく上がります。手数料の読み方をもう少し深めたい方は、投資信託の隠れコストの調べ方ウェルスナビの手数料はインデックス投信と比べて高いのか も参考になります。

保障は本当に必要か?の線引き

前章で「A vs B」を比べましたが、その前に立ち止まりたい問いがあります。そもそも、その死亡保障は本当に必要ですか?ここが決まると、選ぶべき組み合わせが変わります。

考え方はシンプルです。

  • 保障が必要な人:自分に万一のことがあったとき、自分の力では生活費を稼げない家族を養っている人です。典型は小さな子どもを育てている場合。ここはAかBのどちらかで、手数料を重視するなら、保障は掛け捨て・資産形成はNISAに分けるBが有力です
  • 保障が不要な人:独身の人や、そうした家族を養っていない人です。配偶者がいまは働いていなくても、働こうと思えば働ける状態なら、配偶者のためだけに大きな死亡保障を持つ必要は薄いと考えています。配偶者も一人の大人だからです。この場合は保障コストを払う必要がないので、最も安いC(NISA単体)で十分なことが多くなります

なお「自分の葬儀費用が心配」という理由で保険を検討する声もありますが、葬儀は貯蓄で払える範囲で行えばよいもので、そのために何十年も保険関係費を払い続ける必要はありません。

この「保障は掛け捨てで確保し、資産形成はNISAなどで別に行う(=保険と投資は分ける)」という考え方は、リベラルアーツ大学(両学長)やリベシティが以前から一貫して発信している方針でもあります。1つの商品に保障と運用を混ぜると、どちらのコストを払っているのか見えにくくなる。だからこそ分けて持つ、というのが基本の型です(出典は参考文献に記載)。

混ぜる(変額保険)はコストが見えにくく、分ける(掛け捨て保険+NISA)はそれぞれのコストがはっきり見える、という対比のイラスト

「変額保険ならでは」と言われる強みは本当か

よく挙がるのは「強制的に積み立てられる」「相続対策になる」の2つです。ただし冷静に見ると、その多くは変額保険でなくても実現できます。

  • 強制的に積み立てたい:相場が下がっても払い続けやすい、という声はあります。ただしNISAもクレカ積立や口座からの自動引き落としで同じ自動積立ができ、「保険でないと続かない」わけではありません。むしろ保険は途中でやめると解約控除がかかる=やめにくいだけ、とも言えます。
  • 相続対策:生命保険金には「500万円×法定相続人」の非課税枠があります。ただし得になるのは、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)を超えて相続税がかかる家庭に限られます。節税額も、この枠に相続税率(10%〜)を掛けた分——法定相続人1人あたり数十万円規模にとどまることが多いです。しかもこの枠は掛け捨てや定額の終身保険でも使え、変額保険である必要はありません。毎年の保険関係費が、この節税額を長期で食いつぶす可能性もあります。

つまり、「変額保険でなければ得られない」固有のメリットは限定的だ、というのが正直なところです。それでも、保障と運用を1つにまとめて管理したいといった手間の面での好みはあり得ます。大切なのは、これらのメリットが本当に自分に当てはまるか、コストに見合うかを冷静に確かめることです。

すでに契約している人へ:解約すべきかの判断基準

すでに入っている場合、「今すぐ解約すべき?」と焦るかもしれません。ここで大事なのは、比べるものを間違えないことです。

これまで払った保険料は、解約してもしなくても戻ってきません。いわゆる埋没費用(サンクコスト)で、判断材料にはなりません。「ここまで払ったのだから」は、続ける理由にも、解約する理由にもならないということです。

見るべきは、これから先だけです。比べるのは次の2つになります。

  • 解約する場合:いま受け取る解約返戻金と、これから払うはずだった保険料。これをNISAで運用したら、満期の時点でいくらになりそうか
  • 続ける場合:そのまま払い続けたときに受け取れる満期金・解約返戻金はいくらか

言い換えると、判断の軸は「これから払う保険料が、どれだけの利回りで返ってくるか」です。ここが低いなら、同じお金をNISAに回したほうが増えます。

もちろん保障が必要かどうかも合わせて確認が必要で、最終的にはご自身で判断すべき事柄です。不安なら、商品を売らない立場の専門家(有料のFPなど)に相談するのも一手です。

目論見書のどこを見るか

手元の目論見書(またはご契約のしおり・設計書)で、次の3点を確認してください。

  • 保険関係費の料率:毎年いくら引かれているのか。これがNISAとの差の主因です
  • 解約控除の残り期間:あと何年で解約控除がゼロになるのか
  • 解約返戻金の推移表:何年目に払込保険料を上回る見込みか(=元本割れが解消する時期)
  • 現時点の解約返戻金:いま解約するといくら戻るのか(払った額を下回っていることも多い)

解約控除は「払い続けるコスト」と並べて見る

解約控除が残っていると、「違約金を取られるくらいなら、ゼロになるまで待とう」と考えたくなります。ただし待っている間も保険料を払い続け、そこから保険関係費が引かれ続けます。解約控除の額だけを見て待つと、その間に払う費用のほうが大きかった、ということが起こります。

ここで1つ、混同しやすい点を補足します。「解約控除がゼロになる時期」と「元本割れが解消する時期(解約返戻金が払込保険料を上回る時期)」は、別のものです。解約控除は契約から一定年数で必ずゼロになりますが、変額保険はそのあとも保険関係費が毎年引かれ続けるため、控除がゼロになった時点ではまだ元本割れが続いていることも珍しくありません(最終的にどうなるかは運用次第です)。「控除が明ける=損がなくなる」ではないので、目論見書の解約返戻金の推移表で両方の時期を確認してください。

そのうえで、天秤にかけるのは次の2つです。

  • 払い続けるコスト=いまの積立金 × 保険関係費の年率 × 解約控除がゼロになるまでの残り年数
  • いま解約するコスト=現時点の解約控除の額

たとえば積立金が150万円、保険関係費が年1.5%、解約控除の残りが3年だとします。払い続けるコストは 150万円 × 1.5% × 3年 = 約6万7,500円。現時点の解約控除が6万円なら、両者はほぼ拮抗します。

「待つ」を利回りに換算して比べる

もう一歩踏み込むと、待つという行為そのものを利回りに直して比べられます。待って得られるのは「解約控除を払わずに済むこと」、その代わりに払うのが「その間の保険関係費」。差額が、待つことで得られるリターンです。

先ほどの例(積立金150万円・保険関係費年1.5%・残り3年)で計算すると、

  • 解約控除が10万円のとき:10万円 − 6万7,500円 = 3万2,500円。150万円に対して3年で約2.2%、年利にすると約0.7%
  • 解約控除が20万円のとき:20万円 − 6万7,500円 = 13万2,500円。150万円に対して3年で約8.8%、年利にすると約2.9%

この数字を、解約したお金をインデックス投資に回した場合の期待リターン(本記事の試算では年3%と置いています)と比べます。前者の0.7%なら投資に回すほうが有利、後者の2.9%ならほぼ互角、という読み方です。待つ価値があるのは、解約控除がよほど大きく、残り期間が短い場合に限られることが分かります。

判断は「そのお金をいつ使うか」でも変わる

同じ数字でも、そのお金の使い道によって答えは変わります。

  • 数年以内に使う予定のお金:値動きのあるインデックス投資に移すこと自体が向きません。この場合は解約控除がゼロになるまで待ち、確実に受け取るほうが合理的です
  • 15年以上使う予定のないお金:早く投資に移すほうが、運用できる期間が長くなるぶん有利になりやすいです。数年の解約控除を惜しんで、その先の十数年を高い手数料の中で過ごすのは割に合いません
  • ただし例外:上で計算した「待つことの年利」が、インデックス投資の期待リターンを上回るのであれば、そのまま続ける判断も合理的です

※ これは積立金が一定という前提のごく粗い概算です(実際は運用で増減します)。それでも、どちらが大きいかの見当をつけるには十分です。

すでに契約している方は、まず解約控除があと何年でゼロになるかを目論見書で確認するところから始めてみてください。数字が分かれば、感情ではなく損得で判断できます。

なお、解約前にもう1つ確認したいことがあります。健康状態によっては、掛け捨て保険に入り直せない、あるいは保険料が上がる可能性があります。保障が必要な人は、先に新しい保険の加入手続きを済ませてから、古い契約を解約するのが安全です。

目論見書が手元にない場合は、保険会社の契約者向けマイページで確認できることが多く、コールセンターに連絡すれば再発行や口頭での確認にも応じてもらえます。

解約控除は契約からの年数が経つほど階段状に小さくなり、一定年数でゼロになるイメージ図。ゼロになる前は早期解約が不利、ゼロ以降はペナルティなし

よくある質問(FAQ)

Q. 変額保険のデメリットは何ですか?

一番のデメリットは、NISAには存在しない保険関係費解約控除という2つのコストが重なることです。同じ運用成績でも、その分だけ手元に残る額が目減りします。加えて、費用が保険料の中に溶け込んでいて実質いくら払っているのかが分かりにくいこと、途中でやめると解約控除がかかることも挙げられます。内訳は「変額保険の手数料構造を分解する」でまとめています。

Q. その場でどう断ればいいですか?

「持ち帰って検討します」の一言で十分です。理由を細かく説明する必要はありません。むしろその場での即決を求められること自体が、判断材料がまだ足りていないサインです。目論見書の「保険関係費」の料率と「解約控除」のスケジュールだけメモして持ち帰り、家で落ち着いて比べてください。断りにくいと感じるのは自然なことですが、契約は数十年続きます。数日考える時間をもらうのは、まったく失礼にあたりません。

Q. 変額保険を勧める窓口の人が悪い、ということですか?

いいえ。勧めること自体は業界共通の一般的な収益構造で、違法でも不誠実でもありません。問題は人ではなく、契約者からコストが見えにくいという商品の作りのほうです。冷静に中身を確認できれば十分です。

Q. サインしてしまいましたが、やめられますか?

契約直後であればクーリングオフ(申込撤回)が使える場合があります。生命保険では原則として「申込日か書面交付日のいずれか遅い日から8日以内」ですが、医師の診査を受けた後などは対象外になることもあります。適用条件や期間は契約内容で異なるため、まずは証券やしおりで期限を確認してください。

Q. 変額保険は「保険」と「投資」、どちらで考えるべき?

両方が混ざっているのが分かりにくさの原因です。判断するときは一度分解し、「この保障を掛け捨てで買うといくらか」「この運用をNISAでやるとコストはいくらか」に置き換えて比べると、正体が見えます。

Q. NISAだけだと保障がなくて不安です。どうすれば?

その場合こそ「分ける」発想が有効です。必要な保障は掛け捨て保険で安く確保し、資産形成はNISAで行う(本記事のBパターン)。保障と運用を1本にまとめないほうが、コストも見通しも良くなります。

Q. すでに含み益が出ています。それでも見直す意味はありますか?

あります。含み益の有無より、「これから毎年払い続ける保険関係費」と「解約控除の残り」で判断します。残り期間が長いほど、将来払うコストの総額は大きくなります。

まとめ

本記事のポイントを振り返ります。

  • 変額保険には、NISAにない保険関係費と解約控除が重なる。NISAと比較できるのは運用管理費用(=信託報酬)だけ
  • 保障・支払額・運用成績をそろえて比べると、モデル試算では「NISA+掛け捨て」が変額保険より手元に残りやすい。さらにNISAは運用益が非課税、変額保険の運用益は課税対象のため、税引き後の差はもっと広がりやすい
  • 保障が要る人はAかB、要らない人はC(NISA単体)で十分なことが多い。相続対策として勧められることもあるが、生命保険金の非課税枠は掛け捨てや定額の終身保険でも使えるため、変額保険である必要はない
  • すでに加入なら、払込済みの保険料は判断材料にしない。「これから払う保険料の利回り」と「解約してNISAで運用した場合」を比べ、保障の必要性と合わせて自分で(必要なら専門家と)判断する

最後に、迷ったときの3つの質問チェックリストです。

  1. 保障と貯蓄を、掛け捨て保険とNISAに分けられないか
  2. この手数料(保険関係費)を、20年払い続けられるか・払う価値があるか?
  3. (契約済みなら)これから払う保険料を、解約してNISAで運用した場合と比べたか?

まだ入っていない方は、その場でサインせず、目論見書の「保険関係費」の料率をメモして持ち帰ることから。すでに入っている方は、解約控除があと何年でゼロになるかを目論見書で確認することから始めてみてください。数字が手元に並べば、勧められるままではなく、自分の物差しで判断できるようになります。

なお本記事は特定の保険商品の推奨・非推奨を目的としたものではなく、最終的な判断はご自身の責任で、必要に応じて中立的な専門家にご相談ください。何かの参考になれば幸いです。


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参考文献・出典